イベントフラグ ― tEventflag

イベントフラグは、イベントの有無をビットごとのフラグで表現することにより、同期を行うためのオブジェクトです。

使用方法

イベントフラグの生成

アプリケーション開発者は tEventflag セルタイプのセルを生成することにより、イベントフラグを生成することができます。次の例では MyEventflag という名前のイベントフラグセルを生成し、 MyCelleTaskBody をメインルーチンとして結合しています。

app.cdl
celltype tMyCellType {
  call sEventflag cEventflag;
};

cell tMyCellType MyCell {
  cEventflag = MyEventflag.eEventflag;
};

cell tEventflag MyEventflag {
  attribute = C_EXP("TA_NULL");
  flagPattern = 0;
};
tMyCellType.c
void eTaskBody_main(CELLIDX idx)
{
    CELLCB  *p_cellcb = GET_CELLCB(idx);
    // ...
}

イベントフラグの制御

todo tTask が提供する eTask という名前の受け口を利用することにより、タスクの制御及び状態の取得を行うことができます。

app.cdl
cell tTask MyTask {};

celltype tMyAnotherCellType {
    call sTask cTask;
};

cell tMyAnotherCellType MyAnotherCell {
    cTask = MyTask.eTask;
};
tMyAnotherCellType.c
// フラグのセット
FLGPTN setPattern;
cEventflag_set(setPattern);

// フラグの現在状態の参照
T_RFLG *pk_eventflagStatus;
cEventflag_refer(pk_eventflagStatus);

なお、非タスクコンテキスト内では、eEventflag の代わりに eiEventflag を使用する必要があります。

リファレンス

セルタイプ

celltype tEventflag

イベントフラグの生成、制御及び状態の取得を行うコンポーネントです。

本コンポーネントは CRE_FLG 静的API [NGKI1558] によりイベントフラグの生成を行います。静的APIの引数の値には、一部を除き属性値が用いられます。

attr ID id = C_EXP("FLGID_$id$");

イベントフラグのID番号の識別子 (詳しくは カーネルオブジェクトのID番号 を参照) を C_EXP で囲んで指定します (省略可能)。

attr ATR attribute = C_EXP("TA_NULL");

イベントフラグ属性 [NGKI1550] を C_EXP で囲んで指定します (省略可能)。

TA_NULL

デフォルト値(FIFO待ち)。

TA_TPRI

待ち行列をタスクの優先度順にする。

TA_WMUL

複数のタスクが待つのを許す。

TA_CLR

タスクの待ち解除時にイベントフラグをクリアする。

attr FLGPTN flagPattern

イベントフラグのビットパターン(符号なし整数)。

attr ACPTN accessPattern [4]

todo

entry sEventflag  eEventflag

イベントフラグの制御及び状態の取得を行うための受け口です。

entry siEventflag  eiEventflag

イベントフラグの制御を行うための受け口です (非タスクコンテキスト用)。

シグニチャ

signature sEventflag

イベントフラグの制御、及び状態の取得を行うためのシグニチャです。

ER set([in]FLGPTN setPattern)

イベントフラグに対して、setPatternで指定されるビットをセットします。サービスコール呼び出し前のビットパターンとsetPatternの値のビット毎の論理和に更新します。

この関数は set_flg サービスコール [NGKI3534] のラッパーです。

Param setPattern

セットするビットパターン。

Return

正常終了 (E_OK) またはエラーコード。

ER clear([in] FLGPTN clearPattern);

イベントフラグに対して、clearPatternが対応するビットが0になっているビットをクリアします。

この関数は clr_flg サービスコール [NGKI1611] のラッパーです。

Param clearPattern

クリアするビットパターン(ビット毎の反転値)。

Return

正常終了 (E_OK) またはエラーコード。

ER wait([in] FLGPTN waitPattern, [in] MODE waitFlagMode, [out] FLGPTN *p_flagPattern);

イベントフラグのビットパターンがwaitPatternとWaitFlagModeで指定される待ち解除条件満たすのを待ちます。

この関数は wai_flg サービスコール [NGKI1618] のラッパーです。

Param waitPattern

待ちビットパターン。

Param waitFlagMode

待ちモード。

Param p_flagPattern

待ち解除時のビットパターンを入れるメモリ領域へのポインタ。

Return

正常終了 (E_OK) またはエラーコード。

ER waitPolling([in] FLGPTN waitPattern, [in] MODE waitFlagMode, [out] FLGPTN *p_flagPattern);

イベントフラグのビットパターンがwaitPatternとWaitFlagModeで指定される待ち解除条件満たすのを待ちます(ポーリング)。

この関数は pol_flg サービスコール [NGKI1619] のラッパーです。

Param waitPattern

待ちビットパターン。

Param waitFlagMode

待ちモード。

Param p_flagPattern

待ち解除時のビットパターンを入れるメモリ領域へのポインタ。

Return

正常終了 (E_OK) またはエラーコード。

ER waitTimeout([in] FLGPTN waitPattern, [in] MODE waitFlagMode, [out] FLGPTN *p_flagPattern, [in] TMO timeout);

イベントフラグのビットパターンがwaitPatternとWaitFlagModeで指定される待ち解除条件満たすのを待ちます(タイムアウトあり)。

この関数は twai_flg サービスコール [NGKI1620] のラッパーです。

Param waitPattern

待ちビットパターン。

Param waitFlagMode

待ちモード。

Param p_flagPattern

待ち解除時のビットパターンを入れるメモリ領域へのポインタ。

Param timeout

タイムアウト指定。

Return

正常終了 (E_OK) またはエラーコード。

ER initialize(void);

対象イベントフラグを再初期化します。対象イベントフラグのビットパターンは初期ビットパターンに初期化されます。

この関数は ini_flg サービスコール [NGKI1639] のラッパーです。

Return

正常終了 (E_OK) またはエラーコード。

ER refer([out] T_RFLG *pk_eventflagStatus);

イベントフラグの現在状態を参照します。

この関数は ref_flg サービスコール [NGKI1648] のラッパーです。

Param pk_eventflagStatus

イベントフラグの現在状態を入れるメモリ領域へのポインタ。

Return

正常終了 (E_OK) またはエラーコード。

signature siEventflag

イベントフラグの制御を行うためのシグニチャです (非タスクコンテキスト用)。

ER set([in] FLGPTN setPattern);

イベントフラグに対して、setPatternで指定されるビットをセットします。サービスコール呼び出し前のビットパターンとsetPatternの値のビット毎の論理和に更新します。

この関数は set_flg サービスコール [NGKI3534] のラッパーです。

Param setPattern

セットするビットパターン。

Return

正常終了 (E_OK) またはエラーコード。

実装の詳細

イベントフラグの生成

tEventflag によるイベントフラグの生成は、以下に示しているようなファクトリ記述により静的 API 記述を生成することで実現されています。

kernel.cdl (抜粋)
factory {
    write( "tecsgen.cfg", "CRE_FLG(%s, { %s, %s});", id, attribute, flagPattern);
};

最初の MyEventflag を用いた例の場合、以下のような静的API記述が生成されます。

tecsgen.cfg
CRE_FLG( FLGID_tEventflag_MyEventflag, { TA_NULL, 0 });

tEventflag が持つ属性は、 id を除き実行時にはすべて未使用である為、[omit] 指定を行うことでこれらの属性値へのメモリ割り当てが行われないようにしています。

サービスコール

eEventflag 及び eiEventflag に対する呼出しは、以下に示すような受け口関数により TOPPERS/ASP3 カーネルのサービスコールへの呼出しに変換されます。

tEventflag_inline.h
Inline ER
eEventflag_set(CELLIDX idx)
{
    CELLCB  *p_cellcb = GET_CELLCB(idx);
    return(set_flg(ATTR_id, FLGPTN setptn));
}